01.どんな病気?
悪性リンパ腫とは、免疫を担当するリンパ球から発生する成熟型造血器腫瘍です。腫瘍細胞は基本的にはリンパ組織(リンパ節や脾臓)で増殖するため、首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れたり、脾腫をきたしたりします。
さらに腫瘍細胞は、胃腸などの消化管、脳や脊髄などに直接浸潤することもあります。また、悪性リンパ腫ではB症状(発熱、寝汗・体重減少など)を伴うことがあり、その場合は予後が悪くなる傾向があります。
血液検査での可溶性IL-2受容体(悪性リンパ腫の腫瘍マーカー)、LDH、CRPの上昇の有無も重要な指標となります。
悪性リンパ腫は、リンパ節生検などによって病理学的に確定診断されます。
大きく分けてB細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫に分類されますが、これらは病理学的にはさらに100種類以上に細かく分類されます。一方、悪性リンパ腫は、治療的な視点に基づいて以下のように分類されます。
- ✓ 高悪性度リンパ腫(アグレッシブリンパ腫)
放置すれば急速に進行していくタイプで、びまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)などが代表例です。
- ✓ 低悪性度リンパ腫(インドレントリンパ腫)
比較的緩徐に進行するタイプで、濾胞性リンパ腫(FL)、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)などが代表例です。このタイプのリンパ腫は、増殖が遅く症状も軽い反面、抗がん剤が効きにくいという特徴があります。
02.治療について
悪性リンパ腫の治療は、上記の悪性度に加えて疾患の進行度(ステージ)によって決定されます。通常の悪性リンパ腫のステージは以下の4種類に分類されます。
ステージI:1つのリンパ節領域に現局
ステージII:横隔膜を挟んで上か下の片側のみでリンパ節腫脹が2領域以上ある
ステージIII:横隔膜を挟んで両側でリンパ節腫脹が2領域以上ある
ステージIV:リンパ節以外の臓器にびまん性または多発性の病変がある、あるいは骨髄浸潤がある
- ✓ 高悪性度リンパ腫の治療方針
高悪性度リンパ腫は、放置すれば急速に進行して予後が悪い反面、抗がん剤が効きやすいという特徴があります。
治療は、複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法が実施されます。
最も多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を例にとると、R-CHOP療法(リツキシマブ、シクロフォスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニソロン併用療法)を6~8コース実施して腫瘍細胞を根絶させることを目標にします。
ステージIの場合はR-CHOP療法を3回に減らす代わりに原発部位に放射線治療を行う場合もあります。化学療法は、初回は入院、2回目以降は通院で実施されるケースが多く見られます。
なお、悪性度が高い場合や再発をきたしてしまった場合は、自家造血幹細胞移植(ASCT)やCAR-T細胞療法などのさらに強力な治療が実施されます。 - ✓ 低悪性度リンパ腫の治療方針
低悪性度リンパ腫は、仮に病期(ステージ)が進んでいても症状がなければ、原則的には無治療で経過観察します。
もし、経過中にB症状(発熱、寝汗・体重減少など)、健康な臓器機能の障害、骨髄抑制(貧血や血小板減少)、白血化(血液中にリンパ腫の細胞が出現)などが出現すれば治療が開始されます。
治療はリンパ腫のタイプ(B細胞性、T/NK細胞性など)によって異なります。最も多い濾胞性リンパ腫(FL)を例にとると、BR療法(ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法)などが実施されます。