01.どんな病気?
真性多血症(PV)は、赤血球が過剰に作られて様々な問題を引き起こす骨髄増殖性腫瘍(MPN)の仲間です(MPNについては前項参照)。
PVは慢性骨髄性白血病と同じく、造血幹細胞の遺伝子変異によって引き起こされる造血器腫瘍です。
PVでは約95%にJAK遺伝子の変異がみられるのが特徴です。
PVでは腫瘍化した造血幹細胞から赤血球が無制限に産生されて多血症となり、赤ら顔、入浴後などの皮膚のかゆみ、めまいや倦怠感、高血圧などの症状を伴います。
さらにPVでは血栓症を引き起こすリスクが高まります。血栓症とは血管内で血液が固まり、その先に血液が届かなくなって臓器の働きが障害される病気です。
血栓症には動脈血栓症(心筋梗塞や脳梗塞)と静脈血栓症(エコノミークラス症候群など)があります。
さらに長期に経過すると、骨髄線維症や急性白血病などの、より予後の悪い病型に移行することがあります。
02.治療について
PV治療の最も重要な目的は血栓症を予防することです。
そのために低用量アスピリン内服が開始され、また、ヘマトクリット値<45%となるように適宜瀉血療法が行われます。
さらに、血栓症のハイリスク症例(年齢が60歳以上または過去に血栓症の既往歴がある方)、だるさ・痒み・脾腫による腹部症状などの症状が重い方、あるいは、重度の白血球や血小板増加を伴う方などに対しては、低用量アスピリンや瀉血に加えて、少量の抗がん剤で血球を直接減少させる細胞減少療法が実施されます。
細胞減少療法にはヒドロキシウレア(ハイドレア®)が用いられることが一般的ですが、ヒドロキシウレアには二次発がんや催奇形性の懸念もあるので,特に若い方への使用は慎重になる必要があります。
最近登場したロペグインターフェロン(ベスレミ®)は、発がん性や催奇形性がないことに加えて腫瘍細胞(JAK2変異陽性細胞)を減少させ、将来的な骨髄線維症や急性白血病へのリスクを軽減させうることが報告されているため、特に若年者に対しては、有力な選択肢となる可能性があります。
また、分子標的治療薬であるルキソリチニブ(ジャカビ®)はPVに伴う脾腫やそう痒、倦怠感などの諸症状を改善する効果が高く、ハイドロキシウレアが無効な症例に対して有力な選択肢となります。