01.どんな病気?
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血液中の血小板が減少して出血症状を引き起こす、女性に多い疾患です。
ITPは自己免疫疾患の仲間で、免疫担当細胞が自分自身の血小板を "異物"(細菌など)と誤認して破壊することで血小板減少を引き起こします。
風邪を引いた後などに一時的に出現して自然に軽快する急性型と、長期にわたって血小板数が低い状態が長期にわたって持続する慢性型があります。
02.治療について
ITPと診断された場合は、まず、ヘリコバクターピロリ菌がいないか検査します
重篤な出血症状があるなどの緊急性がない場合は、除菌治療を試みることで約半数の患者さんで血小板数の改善が見込めます。
ITPの治療開始は血小板数と出血症状の有無で決定します。一般的に血小板数 < 2万/µL以下、あるいは、血小板数≧2万/µLでも多発する紫斑、点状出血、血便、口腔粘膜からの出血などの重い出血症状がある場合はすぐに治療を開始します。
また、出血症状が特にない場合でも、心臓などの大きな手術を行う場合は、術前に血小板数を5~7万/µL以上となるように治療する場合があります。
ITPの治療は、ステロイド剤(プレドニソロン内服療法やデキサメサゾン大量療法)から開始するのが一般的で、効果不十分や副作用で継続困難な場合は、エルトロンボパグ(レボレード®)、ロミプロスチム(ロミプレート®)、リツキシマブ、脾臓摘出、ホスタマチニブ(タバリス®)などの治療が試みられます。また、手術前や緊急時など短期間で血小板数を増やしたい場合はγ-グロブリン大量療法が実施されます。
03.療養上のその他の注意事項
ITPにおいては、普段は血小板数が安定していても風邪などのウイルス感染、ワクチン接種、妊娠、また、特に誘因がなくても急に血小板数が低下することがあります。
もし、紫斑が急に増加したり、口内に出血したりした場合には、必ず通院先に受診を早めてもらうよう相談しましょう。
特にITPの患者さんが妊娠された場合は、「妊娠合併ITP」として注意深く観察し、必要時に速やかに治療を開始することが、母子の命を守る上で重要となります。
もし、妊娠が判明した場合は、産婦人科と血液内科の両方が存在する大病院への転院も含めて、担当医とよく話し合ってください。